共有持分とは?不動産相続後にできることや不動産共有によるトラブルも解説

共有持分とは?不動産相続後にできることや不動産共有によるトラブルも解説

親が亡くなったことをきっかけに、生前所有していた不動産を相続することは多いでしょう。
相続人が複数いる場合、共有名義で所有する選択肢もありますが、後々のトラブルにつながることもあるため、慎重な判断が求められます。
今回は不動産の相続において重要な「共有持分」とは何か、共有持分でできることや相続後のトラブルを解説します。

不動産相続における共有持分とは

不動産相続における共有持分とは

共有持分とは

共有持分とは、複数名が1つの不動産の所有者となるケースにおいて、1人ひとりがもつ不動産の所有権の割合を指します。
たとえば、被相続人が遺した土地を4名の子どもが相続した場合、遺産分割協議がおこなわれる前の段階では、各相続人の共有持分は4分の1となります。

共有持分が生じる理由

複数名による不動産の所有は、被相続人が生前に所有していた土地や建物の相続でよくみられます。
具体的には亡くなった親がもともと所有していた不動産を、その子どもたちが兄弟姉妹で相続するケースです。
共有持分が発生するのは、相続のほか、2名以上で費用を負担して不動産を購入するケースや、夫婦・兄弟姉妹が資金を出し合い不動産を取得するケースなどです。

相続した不動産の共有持分でできること

相続した不動産の共有持分でできること

複数名で不動産を相続した場合、共有持分に限定してできることは以下の3点です。

●保存行為
●管理行為
●処分行為


3つの行為のなかには、単独でおこなえるものもあれば、不動産の共同所有者の同意がなければ実行できないものもあります。
共有持分を活用したい場合に迷うことのないよう、それぞれの特徴などを確認しておきましょう。

保存行為としてできること

保存行為とは、相続などで取得した不動産の価値を保つことを目的とした行為です。
不動産の劣化や損傷を防ぎ、結果としてほかの共有持分の所有者の利益を保つことにつながるため、保存行為は単独でできることに該当します。
具体的な保存行為は、不動産の修理および修繕行為や地役権の設定登記請求、所有権がないにもかかわらず名義人となった方の抹消登記請求などさまざまです。
たとえば、相続した不動産に老朽化を原因とした破損が見つかり該当部分を修理するケースは、不動産の価値を下げないための対策であり、保存行為にあたります。
不動産を不法に占拠する第三者に対して明け渡しを求める行為、法定相続分の共有登記を済ませる行為なども保存行為の一種です。
ただし、見栄えを良くするための工事や、不動産の共同所有者による占拠への明け渡し請求などは保存行為の範囲を超えるため、単独でできることには該当しません。

管理行為としてできること

管理行為とは、不動産がもつ性質および形状に変化を与えない程度に手を加える行為や短い期間の賃貸借契約です。
保存行為とは異なり管理行為を実行するには、不動産を共同で所有している方のうち、行為の実行に同意した方の共有持分割合が過半数である必要があります。
たとえば、不動産を共同所有しているA~Dが、それぞれ以下の割合で共有持分を所有していると仮定します。

●A:35%
●B:30%
●C:20%
●D:15%


ある管理行為の実行にあたりAとCが同意した場合、AとCの合計共有持分割合は55%と過半数を占める結果になるため、実行できます。
しかし、管理行為の実行に同意した方がCとDだけの場合は、共有持分の合計割合が35%となり、過半数にいたらず実行できません。
なお不動産を共同で所有している方のうち半数を超える方々からの同意を得たとしても、共有持分の合計割合が過半数に満たなければ管理行為は実行不可となります。
管理行為に該当するものとしては、相続した不動産の床を畳からフローリング材に変更するなど、リノベーションあるいはリフォームです。

処分行為としてできること

処分行為とは不動産の売却や地上権の設定など、不動産の所有権を失う、もしくは制約や不利益など悪影響をおよぼす程度が強い行為です。
変更行為の一種にあたると判断されていますが、制約や不利益を被る行為に関しては程度の大きさにより処分行為あるいは管理行為のどれに該当するか判断が難しいケースもあります。
処分行為を実行するには不動産を共同で所有する全員から同意を得る必要があるため、保存行為や管理行為よりも実行困難です。
もし処分行為に1名でも反対する方がいると、説得できない限り処分行為の実行は諦めることになるでしょう。
なお、全員から同意が得られない場合でも、共有持分だけであれば共同で所有する方々からの同意がなくても売却は可能です。
管理行為を超える長さで賃貸物件として貸し出すケースも処分行為を含む変更行為に該当するため、賃貸借契約が長期化する場合は事前に同意を得なければなりません。

相続した不動産の共有持分を設定すると起こり得るトラブル

相続した不動産の共有持分を設定すると起こり得るトラブル

相続のタイミングで不動産を共同で所有すると、以下のトラブルの発生が懸念されます。

●不動産のメガ共有
●共同所有者が音信不通
●共有物分割請求訴訟


不動産を複数名で相続する可能性がある方は、共同所有によるトラブルを把握したうえで相続方法を検討すると良いでしょう。

トラブル1.不動産のメガ共有

不動産を共同で所有すると、将来的にメガ共有状態になるおそれがあります。
メガ共有とは、不動産の共同所有者が数十人から数百人におよぶ状態のことです。
メガ共有と呼ばれるほど大人数で1つの不動産を所有する状態になる背景には、相続が関係します。
たとえば、被相続人の不動産を妻と子どもが相続した場合、その後、妻と子どもが亡くなると下の世代へ相続が繰り返され、共同所有者の数が増え続ける可能性があります。
仮に不動産を共同で所有している方が数十名にもおよぶと、管理行為の実行に向けて半数を超える同意を得る手間が発生してしまうのです。
処分行為の実行となれば全員を対象に意思確認する必要があるため、不動産の共同所有を決める前に将来的に多くの労力がかかるリスクを十分検討したほうが良いでしょう。

トラブル2.共同所有者が音信不通

親戚付き合いが希薄だと、不動産の共同所有者に連絡を取ろうにも連絡先がわからず対応できなくなることもあります。
もし住所や電話番号などがわからない共同所有者がいると、不動産の売却など共同所有者全員からの同意が必要な行為を実行できません。
連絡先を見つけるまでに時間がかかるほか、その方が亡くなっていると子どもなどに相続権が移行され、権利関係が複雑な状態になることも想定できます。
相続人の把握自体が困難になり不動産の売却時期が大幅に遅れる、もしくは売却が困難になるおそれもあるでしょう。

トラブル3.共有物分割請求訴訟

共有物分割請求の訴訟は、不動産の相続方法を共同所有にしたケースによくあるトラブルのひとつです。
共有物分割請求訴訟とは、共有状態の解消を目的に裁判所へ提起される訴訟であり、具体的な相続方法を決めずに共同所有を選んだ場合によく起こります。
たとえば、共同で所有することを選んだものの、煩雑な不動産管理へのストレスから相続人との共有物分割を請求することもあります。
訴訟にいたると裁判所からの裁定にしたがい不動産を分割することになるため、トラブルを回避するには相続方法などを十分話し合うことが大切になるでしょう。

まとめ

共有持分とは、不動産の共同所有者1人あたりがもつ所有権の割合です。
不動産の共有持分でできることには保存行為などが挙げられますが、管理行為などは共同所有者からの同意がない限り実行できません。
共有物分割請求の訴訟を起こされるなどトラブルも懸念されるため、相続には十分注意しましょう。