不動産相続で知っておきたい負動産とは?処分方法や相続放棄について解説

不動産相続で知っておきたい負動産とは?処分方法や相続放棄について解説

相続する不動産の状況などによっては、相続が負担になることがあります。
とくに「負動産」とよばれる不動産を相続してしまうと、後に大きなトラブルに発展する可能性があるため、注意が必要です。
そこで今回は、負動産とはどのようなものなのか、負動産の処分方法と相続放棄について解説します。

不動産相続における負動産とは

不動産相続における負動産とは

不動産を相続される方のなかには、負動産といったことばを耳にされたことがない方がいらっしゃるかもしれません。
まずは、負動産とはどのようなものなのか、具体的な内容を見てみましょう。

負動産の定義

負動産とは、法的な定義があることばではなく、一般に広く使われている造語です。
その語源は不動産にありますが、負の文字が使われていることから、マイナスの意味を持つ不動産であることがわかるでしょう。
一般的に、負動産の定義とされているのは、所有していても利益にならないどころか、マイナスの負担が増えていく不動産です。
利益を生まない負動産には、いくつかのパターンがありますので、不動産相続前にチェックするのがおすすめです。

負動産①住む予定がない実家

親から相続した不動産のなかでも、住む予定や需要がないものは、負動産になりやすい特徴があります。
親元から離れて自立している子どものなかには、すでにマイホームを購入されている方も存在することから、実家を相続しても空き家になることがあります。
また、マイホームを持ちたいと考えていても、勤務先など生活の拠点が実家から離れていると、相続した実家に住むことは困難です。
さらに、住む予定がない実家を売却したくても需要が低く買い手が見つからない場合には、固定資産税がかかり続けるほか、空き家となってもメンテナンスの手間がかかります。

不動産②リゾートマンション

バブル景気の時代に流行したリゾートマンションや別荘は、負動産となる場合があります。
余暇を楽しむためにマイホームとは別に購入されたリゾートマンションですが、現代ではその価値が減少していることがほとんどです。
また、都市部から離れた場所にあるリゾートマンションは、生活するうえで不便な立地であるため、売却したくても買い手がなかなか見つからないことがあります。
売却したくても売れない場合には、固定資産税・管理費といった経費が発生し続け、所有するだけで出費がかさむでしょう。

不動産③入居者の少ない賃貸物件

実家やリゾートマンションだけでなく、アパートなど収益目的の賃貸物件も負動産となるリスクを抱えています。
立地が悪い賃貸物件のほか、築年数・間取り・設備などの面で需要が見込めない賃貸物件は、入居者が集まりにくく常に空室が生まれやすくなります。
とくに、ローンを組んで賃貸物件を建てた場合には、毎月赤字が増えていく負動産となるでしょう。

相続した負動産の処分方法

相続した負動産の処分方法

親から相続した実家などが負動産だとわかったら、所有し続けるのではなく処分を考えるのがおすすめです。
具体的な処分方法にはどのようなものがあるのか、チェックしてみましょう。

処分方法①売却する

マイホームを探している第三者が見つかれば、高値で負動産を売却できるチャンスがあります。
そのため、負動産の処分をお考えならば、まずは信頼できる不動産会社へ相談し、売却に向けて動き出すのがおすすめです。
ただし、負動産とよばれる物件の多くは、需要が低く買い手が見つからない物件です。
したがって、売却前には、少しでも買い手候補に興味を持ってもらえるように工夫する必要があります。
一戸建ての負動産を有利に売却したいならば、築年数が古く劣化が進んだ建物を取り壊すことを考えてみましょう。
買い手のニーズに合わないリフォームをおこなうよりも、すぐに新築住宅を建てられる状態の更地であれば、買い手が付きやすくなります。
相続した負動産がマンションの場合には、ある程度リフォームすることを考えてみてください。
最低限のリフォームをおこなえば、内覧で好印象を与えられます。

処分方法②空き家バンクに登録する

買い手が見つからず売却できない負動産は、空き家バンクに登録するのがおすすめです。
売却できないからといってそのまま所有し続けるとコストがかかり続け、場合によっては危険な空き家となってしまいます。
こうした負動産のリスクを回避するには、一般的な売却より安値であっても手放す方法を探すと良いでしょう。
空き家バンクとは、自治体などが主体となり空き家と移住者のマッチングをおこなうサービスです。
一般の買主が見つからない負動産でも、移住者をターゲットとしている空き家バンクであれば、買主や借主が見つかるかもしれません。
自治体によっては空き家バンクを実施していないところがありますので、まずはサービスの有無や利用条件を確認してみましょう。

処分方法③寄附する

一般の買い手が見つからず空き家バンクの利用もできない場合、公的機関への寄附を考えるのがおすすめです。
寄附先となるのは自治体などですが、場合によっては会社・町内会・近隣の個人が引き取ってくれることがあります。
売却・空き家バンクと違い、無償での寄附は売却代金などが手元に残りません。
そのため、損をするように感じられてなかなか寄附に踏み切れない方もいらっしゃるでしょう。
しかし、無償での寄附であっても早く負動産を手放せば、固定資産税などの出費を抑えられるメリットがあります。

負動産を相続放棄する方法

負動産を相続放棄する方法

親が所有している不動産がマイナスの価値しかない負動産だと判明したら、不動産を所有せずに相続を回避する方法を考えてみましょう。

相続放棄の手続き

親から財産を相続せず相続放棄をおこなう場合、親が亡くなり相続が発生してから3か月以内に手続きをおこないます。
この期限内に手続きができない場合には、負動産を含む財産を相続しなくてはならなくなります。
自分以外に兄弟姉妹など複数の相続人がいたとしても、全員が一律で相続放棄を選択する必要はありません。
相続放棄を選択したい方だけが、家庭裁判所で手続きをおこないます。
相続放棄の必要書類を揃えて相続放棄をおこなった後は、固定資産税の支払い義務がなくなります。
また、相続放棄をおこなう場合に注意したいのが、相続放棄する財産を選べないことです。
相続放棄は財産全体に対しておこなうものであり、負動産は相続放棄して預貯金は相続するといった選択はできませんので、遺産全体のプラスマイナスを考えることが大切です。

相続放棄に必要な書類

相続放棄に必要な書類としてまず挙げられるのが、相続放棄申述書です。
家庭裁判所に足を運び手に入れるほか、裁判所のホームページからダウンロードできます。
また、亡くなった被相続人の戸籍謄本・住民票または戸籍の附票も、相続放棄の必要書類です。
さらに、相続放棄する方の戸籍謄本を取得し、必要書類として提出します。

相続放棄にかかる費用

自分で相続放棄の手続きをおこなう場合、必要となる費用は1,650円程度です。
この費用の内訳は、1人800円の収入印紙代、400円ほどの郵便切手代、1通450円の戸籍謄本の取得費用です。
ただし、戸籍謄本の取得は原則として本籍地の役場でしか取得できないため、高額な交通費がかかることがあります。
一方で、相続放棄の手続きを法律の専門家に依頼する場合だと、別途報酬が発生します。
相続放棄の手続きを依頼する専門家は、弁護士や司法書士です。
報酬の金額に法的なルールはなく依頼先によって差がありますが、一般的な報酬としては数万円~10万円ほどがかかります。

まとめ

負動産とは、買い手が見つかりにくく所有しているだけで固定資産税などのコストがかかり続ける不動産です。
負動産を処分したいならば、更地にして売却・空き家バンクの活用・自治体への寄附などを考えてみましょう。
また、負動産を含む財産すべてを相続放棄すれば、負動産の所有を回避できます。