相続した不動産を売却する流れとは?税金の種類や注意点も解説

相続した不動産を売却する流れとは?税金の種類や注意点も解説

不動産を相続したものの、その後に自分で住むなどの活用をする予定がなく、売却を検討する方は多いかもしれません。
しかし、相続時の不動産売却では、限られた時間内でさまざまな手続きをおこなわなければならないことに注意が必要です。
そこで今回は、相続した不動産を売却するまでの流れや、発生する税金の種類、そして売却時の注意点を解説します。

相続した不動産を売却するまでの流れ

相続した不動産を売却するまでの流れ

不動産相続が発生した場合、限られた期間内に相続の手続きを実施し、相続登記を済ませなければなりません。
その後、必要書類を準備したうえで登記をおこない、売却活動に臨むのが、相続した不動産を売却するまでの基本的な流れです。
遺産相続から売却完了までをスムーズに進行させられるように、3つのステップに分けて売却の流れを解説します。

売却の流れ①遺産相続の手続きをおこなう

不動産相続が発生した場合、まず遺言書の有無を確認し、誰が不動産を相続する権利を持つかを調べます。
遺言書がない場合、原則として法定相続人が不動産を相続するため、相続人同士で遺産分割協議をおこない、財産の分割方法を決定します。
遺産分割協議が完了したら、相続人全員の署名と実印を押印した遺産分割協議書を作成し、合意の証です。

売却の流れ②必要書類をそろえる

不動産を相続した場合、その不動産の所有者を法的に証明するために、不動産相続登記をおこなう必要があります。
必要な書類は全部で8種類と多いため、取得漏れがないように、余裕を持って準備を進めましょう。
まず、相続人全員で用意する必要がある書類は「戸籍謄本」と「印鑑証明書」、不動産を相続する方のみが必要な書類は「住民票」です。
被相続人に関する書類としては、「出生から死亡までの戸籍謄本」と「本籍地が記載された住民票の除票」を準備します。
不動産に関する書類としては、「固定資産評価証明書」と「登記事項証明書」が必要です。
最後に、上記の書類とともに「遺産分割協議書」を添えて、法務局で不動産相続登記をおこないます。

売却の流れ③媒介契約を結び売却活動をおこなう

不動産相続登記が完了した後は、不動産の売却が可能となるため、不動産会社に査定を依頼してください。
査定結果に納得できた場合、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」のいずれかを選び、媒介契約を締結します。
物件の宣伝をはじめとする売却活動は基本的に不動産会社が主導で進めるため、売主が特別な知識を持っていなくても不動産売却を進めることができます。
買主が見つかれば売買契約を締結し、指定された日時に決済と引き渡しをおこなうのが、相続開始から売却までの基本的な流れです。

不動産売却にかかる税金の種類や適用できる控除

不動産売却にかかる税金の種類や適用できる控除

不動産売却時には、いくつかの種類の税金を支払う必要があります。
ただし、税金には控除や特例を適用できる可能性があるので、有効な節税対策を確認しておきましょう。
ここでは、不動産売却にかかる税金の種類と計算方法、適用できる控除や特例を解説します。

不動産売却で発生する税金の種類と計算方法

不動産売却時に発生する税金の種類は、「登録免許税」「印紙税」「譲渡所得税」の3つです。
登録免許税は、不動産登記をおこなう際に発生する税金で、不動産の固定資産税評価額に0.4%を掛けて計算します。
印紙税は、売買契約書に貼り付ける印紙の費用で、税額は売買金額に応じて異なります。
たとえば、売買金額が1,000万円以上5,000万円以下の場合は2万円、5,000万円以上1億円以下の場合は6万円です。
譲渡所得税は、不動産の売却益が発生した場合に支払う税金です。
譲渡所得税は、不動産の売却額から取得費と譲渡費用を差し引いて算出された譲渡所得に対して課税されます。
税率は不動産の所有期間によって異なり、保有期間が5年超の長期譲渡所得には20.315%、5年以下の短期譲渡所得には39.63%の税率が適用されます。

不動産売却時の税金に適用できる控除

不動産売却時には先述の税金がかかりますが、相続などで取得した空き家を譲渡(売却)する場合、3,000万円の特別控除を適用できます。
自己居住用財産を譲渡(売却)した場合も、同様に3,000万円の特別控除を適用することが可能です。
仮に2,000万円の譲渡所得が発生した場合でも、3,000万円の控除が適用される場合は、譲渡所得税を支払う必要はありません。

不動産売却時の税金に適用できる特例

不動産相続時に相続税が発生した場合、納付した相続税の一部を譲渡所得税の計算時に用いる取得費に加算できる「取得加算の特例」を適用できます。
取得費を加算することで譲渡所得を軽減でき、譲渡所得税の節税につながる可能性があります。
ただし、取得費加算の特例を適用するには、相続開始日の翌日から3年10か月以内に不動産売却を完了させる必要があるでしょう。
また、先述した3,000万円控除と取得費加算の特例は、併用することも可能です。

相続した不動産を売却する場合の注意点

相続した不動産を売却する場合の注意点

相続した不動産を売却する場合に知っておきたい注意点が3つあります。
売却が完了した後に、買主との間でトラブルが発生し、売買契約のキャンセルを求められる可能性もあるので注意しましょう。
ここからは、不動産売却時の注意点を3つ解説します。

注意点①相続登記をしなければ売却ができない

不動産を所有している方が亡くなると、相続人に対して不動産の所有権が移転しますが、法的な手続きは相続登記をおこなうまで完了しません。
登記簿に記載された不動産の所有者が故人のままでは、相続人が不動産を売却できないため、早めに相続登記の手続きを進めましょう。
相続時に必要な登記は「所有権移転登記」です。
相続登記は自分でおこなうことも可能ですが、専門的な提出書類を作成する必要があるため、難しいと感じた場合は司法書士に手続きを依頼することをおすすめします。

注意点②契約不適合責任に問われるおそれがある

契約不適合責任とは、売買契約時に把握できなかった瑕疵(欠陥)が発見された場合に、売主が買主に対して負う責任です。
瑕疵を隠したり、瑕疵の存在を知らずに売却したりすると、売却後に契約不適合責任を追及される可能性があります。
契約不適合責任が認められると、売主は買主の要求に応じて修繕をおこなう必要があり、最悪の場合、売買契約のキャンセルを受け入れなければならなくなるため、注意が必要です。

注意点③早急に遺産分割をおこなう必要がある

不動産相続が発生した後は、早急に遺産分割協議を実施し、相続税を納付する必要があります。
相続税の納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内と定められています。
不動産売却には平均して約6か月かかるため、相続発生後は速やかに遺産分割協議をおこない、迅速に売却活動を進めることが重要です。

まとめ

不動産相続が発生した場合は、まず相続手続きをおこなって必要書類をそろえ、不動産会社に売却活動を頼むのが基本的な流れです。
売却時にはいくつかの税金が発生しますが、控除や特例を活用して節税できます。
契約不適合責任を問われるリスクがあることや、早急に遺産分割協議を済ませる必要があることなどが、売却時の注意点です。
専門家である不動産会社や税理士、司法書士に相談すれば、煩雑な手続きや書類作成の不備を防止でき、より円滑な売却や的確な節税対策が実現しやすくなります。
くわえて、手続きの進行状況や法的なルールを明確に把握できるため、相続人同士の協議もスムーズに進むでしょう。